廃食油と燃料クレジットがSAFを本物の相場テーマに変え始めた

6月5日のReutersによる日本の廃食油争奪報道に、韓国、欧州、米国の制度と供給網の動きが重なり、SAFはESGの掛け声から原料と採算の相場へ移りつつある。

Korean Air image for its domestic SAF route expansion using used-cooking-oil-based fuel.
Korean Air image for its domestic SAF route expansion using used-cooking-oil-based fuel. Source: link
JAL image from its SAF program page covering used cooking oil collection and domestic supply-chain development.
JAL image from its SAF program page covering used cooking oil collection and domestic supply-chain development. Source: link
Airbus A350F image from its May 2026 release highlighting growing SAF-ready aircraft capacity.
Airbus A350F image from its May 2026 release highlighting growing SAF-ready aircraft capacity. Source: link

いま航空関連で面白いのは、単なる旅客需要の話ではありません。持続可能な航空燃料、つまりSAFが、原料確保と制度対応の市場として再評価され始めていることです。ボトルネックはブランドイメージでも、機体技術でもなく、廃食油の回収、製油所の転換、クレジット制度、そして認証済みの供給量を誰が先に押さえられるかにあります。

直近で最も分かりやすい材料は2026年6月5日のReuters報道です。日本は2030年までに航空燃料の10%を持続可能燃料で賄う目標に向け、家庭や事業所からの使用済み食用油回収を急いでいますが、現状の国内生産は目標に対して極めて小さい水準にとどまっています。Reutersは、国内SAF生産が約3万キロリットル、ジェット燃料使用量の0.3%にすぎず、回収や投資が遅れれば、航空会社や精製側が輸入原料や輸入SAFにより高いコストを払う可能性があると伝えました。つまりこれは環境ストーリーではなく、調達コストと利益率の問題になりつつあります。

日本の供給網もすでに現実対応に入っています。JALのSAFページを見ると、家庭の廃食油回収、次世代SAFへの投資、そして多数の企業と組んだ国内サプライチェーン構築が進められています。ENEOSも、すでに海外からSAF分子を輸入し、2024年には10社超の航空会社へ供給したうえで、国内の供給能力拡大を進めていると説明しています。ここから見えるのは、日本がSAFを試験導入の象徴としてではなく、実際の燃料網として育てようとしている点です。相場の見方としては、航空会社だけでなく、精製、エンジニアリング、物流まで視野を広げるべき局面です。

韓国も同じ方向です。Korean Airは、国内精油会社が廃食油由来で生産したSAFを使い、神戸線と大阪線で商用運航への活用を拡大すると公表しました。混合比率自体はまだ小さいですが、意味は明確です。韓国は脱炭素の看板だけではなく、国内精製と供給網の実力に結びつけてSAFを育てようとしているわけです。これは航空株だけでなく、精製・化学・物流の産業政策テーマとして読むほうが自然です。

欧州は需要側の強制力を強めています。Airbusは2026年の年次会見で、欧州では今年すでにSAF義務化が始まっており、2030年に向けて要件がさらに高まると説明しました。さらに2026年5月のA350Fリリースでは、同機が就航時点で最大50%のSAF運用に対応できると示しています。需要は制度で押し上げられ、機体側の対応も進むとなれば、次に問われるのは結局、原料と供給網です。

米国では、このテーマはより採算寄りです。XCF Globalは、2026-2027年の再生可能燃料制度が適格SAFの経済性を押し上げると説明し、4月下旬時点ではD4 RIN価格が1ガロン当たり約3.06ドル分の付加価値に相当すると試算しました。数値自体は変動しますが、メッセージは明快です。米国ではSAFが、長期の理想論というより、政策支援と国内エネルギー安全保障に支えられたクレジットと利益率の相場になりつつあります。

私の慎重な見方では、このテーマは本物ですが、きれいには進みません。勝つのは声の大きい航空会社ではなく、廃食油の回収網、水素化設備、物流、認証、そして製油所転換に耐えられる財務基盤を持つ企業かもしれません。一方で、義務化があるから自動的に利益が出ると考えるのは危険です。原料不足、プロジェクト遅延、補助制度の変更、通常ジェット燃料価格の乱高下は、チェーン全体の収益を揺らします。それでも市場の方向性はかなりはっきりしてきました。SAFはもはやESGの標語ではなく、燃料安全保障と制度対応、そして原料確保の相場になりつつあります。

リスク注意: この記事は市場解説であり、個別の投資助言ではありません。航空会社、精製、再生可能燃料、産業機器、物流関連株は、政策変更、原料不足、実行遅延、クレジット価格変動、原油・ジェット燃料価格の変化で大きく変動する可能性があります。

Sources:
Reuters: 2026年6月5日の日本の廃食油回収強化報道
JAL: SAFプログラムと国内供給網の取り組み
Korean Air: 国産SAF活用の拡大
ENEOS Holdings: SAF輸入と国内供給網整備
XCF Global: 米国のSAFクレジット採算
Airbus: 2026年年次会見の欧州SAF義務化文脈
Airbus: A350FのSAF対応

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