

AI相場は、もはやGPUやHBMだけの話ではありません。いま市場が見始めているのは、その下支えにある地味な層、つまり誰が次のデータセンター増設に必要な電力、系統接続、電力品質を間に合わせられるのかという点です。だからこそ、物色は半導体の勝ち組から、変圧器、開閉装置、変電所、さらには自家発電を含む電力システムへと広がり始めています。
米国では、このテーマに直近の勢いがあります。ロイターは6月9日、米エネルギー情報局(EIA)の見通しを引用し、AI、暗号資産、電化需要の増加を背景に、米国の電力消費が2026年と2027年に過去最高を更新する見通しだと報じました。さらにEIA自身も5月19日のレポートで、商業ビル全体の中でデータセンター向けサーバー電力使用量が増加していく姿を示しています。つまり、これは先の話ではなく、すでに短期予測に入り込んだ制約です。
欧州では、その制約がどう収益機会に変わるかの実例が出ています。シーメンス・エナジーは5月下旬の解説記事で、ポルトガルのStart CampusがAI、クラウド、高性能計算向けに1.2GW規模のSINES Data Campusを開発しており、同社が変圧器、変電設備、Blueガス絶縁開閉装置を供給していると説明しました。ここで重要なのは、ハイパースケーラーの設備投資の会話が、計算装置だけでなく系統接続機器へ移っていることです。そうなると恩恵を受ける上場企業の裾野は一気に広がります。
日本の角度も、単なる周辺サプライヤーでは片づけられなくなっています。Hitachiの最新R&D資料は、生成AI需要の拡大でデータセンターの系統接続が遅れ始めていると明記し、TEPCO Power Gridとの協業で、離れた拠点間に処理負荷を移しながら系統安定化を図る技術を紹介しました。さらにHitachiは5月12日、北米のGW級AIデータセンター向けに、X LABSと組んでメーター裏のエネルギーパークを開発すると発表しました。日本勢はAI相場に部材を供給するだけでなく、電力アーキテクチャ全体の設計側へ踏み込み始めています。
韓国も同じ流れを設備側から取りに行っています。LS Electricは4月29日、Bloom Energy関連のビッグテック向けデータセンター電力ソリューション案件を約3000億ウォン規模で受注したと発表し、4月には北米向けのDC中心データセンター電力機器も前面に出しました。HD Hyundai Electricも5月7日、米国送電市場で765kV超高圧変圧器とリアクトルの1730億ウォン契約を明らかにし、次世代の遮断器や開閉装置を強調しました。韓国勢がAI物語の受益者というだけでなく、その電力の背骨を供給する側に回っている点は見逃せません。
私の見方では、これはAI相場の二次波としてかなり筋の良いテーマです。第一波は計算資源の希少性が勝ちました。次の波では、接続待ちのままAIキャンパスを止めないための「地味な会社」が評価される可能性があります。強気シナリオは、系統制約が長引くことで電力機器や電力管理企業の価格決定力が想定以上に続くこと。弱気シナリオは、公益事業者の判断、許認可、調達リードタイムが長く、受注はあっても売上計上が遅れることです。いずれにせよ、電力インフラを背景要因として片づける段階ではもうありません。
リスク注意: この記事は情報提供を目的とした市場コメントであり、個別の投資助言ではありません。電力インフラ、産業機器、AI関連銘柄は値動きが大きく、規制、系統承認、原材料価格、顧客の設備投資計画の変化によってセンチメントが急変する可能性があります。
出典:
Reuters via TradingView: 米電力消費は2026年と2027年に過去最高見通し
EIA: データセンター向けサーバー電力使用量の拡大
Siemens Energy: データセンターを系統につなぐ競争
Hitachi Technology 2026: 複数データセンターの系統連携エネルギー管理
Hitachi: GW級AIデータセンター向けエネルギーパーク
LS Electric: 約3000億ウォン規模のデータセンター電力案件
LS Electric: Data Center World 2026の北米戦略
HD Hyundai Electric: IEEE PES T&D 2026と米送電案件
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