

AI相場は、半導体とデータセンター電力だけの話ではなくなりつつある。いま市場が探し始めているのは、ソフトウェアの期待を現実の生産性に変える「次の層」だ。韓国、日本、欧州、米国で同時に出てきた材料を並べると、その軸がロボットと自動化へ広がっているのが見えてくる。
直近の引き金は韓国だ。2026年6月26日にReutersがYahoo Finance経由で伝えたところによると、SamsungはAIデータセンター、半導体、電池、ディスプレー、ロボティクスを含む10年規模の大型投資計画を準備していると報じられた。最終的な投資額が変わるとしても、「AIは産業全体を作り替えるテーマだ」というメッセージは強い。韓国の大企業がAIを単なるメモリー景気ではなく、製造業再編の軸として扱い始めているからだ。
日本はロボットの実装力で存在感を持つ。FANUCは5月13日にGoogleとのフィジカルAI協業を発表し、GoogleのAIエージェントがロボットを動かす取り組みを示した。さらに3月24日には、米国でロボット生産能力を備えた新工場と物流センターに9,000万ドルを投じると発表した。ここで重要なのは、ロボット相場が研究室の話から、能力増強と現地化の話へ移っている点だ。AIの話題をどれだけ早く実装台数に変えられるかが問われている。
欧州のシグナルはより技術寄りだが、相場には十分つながる。ABBは6月、PSYONICと組み、人の動作データを使ってロボットの把持や器用さを高める取り組みを公表した。フィジカルAIで本当に難しいのは、ロボットを増やすことより、決まり切った環境以外でも役に立つ水準まで性能を引き上げることだ。そこが進めば、期待先行のテーマが実需に近づく。
米国では、主役がロボット本体だけではないことも見えてきた。Teradyneは6月8日、東京エレクトロンと協力し、AIおよびデータセンター向けデバイスの統合テストソリューションを発表した。AIハードウェアの世代交代が複雑になるほど、検査や測定の層が先に価格決定力を持つことは珍しくない。半導体そのものだけを追っていると、利益率の高い周辺装置を見落としやすい。
私の見方では、今後は「AIインフラ」という狭い見出しより、「フィジカルAI」という枠組みのほうが実態に近い。投資対象は半導体や電力設備から、ロボット、マシンビジョン、産業ソフト、テスト装置へ広がっている。ただし、この領域は受注より先に期待が走りやすい。現時点では、AIという言葉だけでなく、工場投資、導入提携、技術マイルストーンを伴う企業のほうが信頼しやすい。
リスクも明確だ。国家級の投資構想は注文書より早く出やすく、器用さの改善は実証実験で止まる可能性がある。景気が鈍れば、自動化投資は顧客側で先送りされやすい。そうなれば、フィジカルAI関連は安定収益株というより概念株として荒く値動きするかもしれない。
Sources: SamsungのAI投資観測に関するReuters報道 | FANUCのGoogleとのフィジカルAI協業 | FANUCの米国ロボット新工場計画 | ABBのPSYONICとの把持精度強化 | Teradyneと東京エレクトロンのAI向け検査協業
リスク注意: この記事は情報提供を目的とした市場コメントであり、特定資産の売買を勧める個別投資助言ではありません。
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