


この1年、市場は高級EVの販売鈍化や充電性能、AI関連設備投資の勝ち組ばかりを追いかけてきた。しかし、今の本質的な変化はもっと地味で、むしろ長続きしやすい。リン酸鉄リチウム電池、いわゆるLFPが、電気自動車と定置用蓄電の両方で“量を取るための標準解”になり始めている。
米国ではこの流れがすでに現実の投資テーマになっている。Reutersは3月17日、GMとLGエナジーソリューションがテネシー州の電池工場を蓄電池向けに改造すると報じた。EV需要の鈍化に対し、電力需要の拡大を背景に蓄電向けが強くなっているためだ。さらにReutersは3月16日、テスラとLGエナジーソリューションがミシガン州のLFP角形セル工場につながる43億ドルの案件を結んだと伝えた。これは戦場が高価格EVの見栄比べから、より安価で再現性の高いセル供給へ移っていることを示す。
日本のシグナルは、新奇な化学材料というより、生産基盤の積み上げにある。トヨタのノースカロライナ電池拠点はすでに生産を開始しており、HEV、PHEV、BEVを支える長期の製造ハブとして位置づけられている。トヨタは依然としてマルチパスウェイ戦略だが、だからこそ意味がある。慎重な巨大企業が電池の量産基盤を着実に築くなら、市場が見るべきなのは航続距離の派手さより、コスト規律と供給網の支配力だ。
欧州では商品設計の側から同じ流れが確認できる。フォルクスワーゲンは4月29日、新型電動ID. Poloの低出力版に37kWhのLFP電池を標準採用すると発表した。これは重要だ。欧州はLFPを妥協の選択肢としてではなく、大衆車の価格性能を成立させるための中核部材として使い始めている。普及価格帯のEVを広げるなら、LFPはもはや二番手ではなく、政策面でも商業面でも必要な技術になる。
韓国はその下流ではなく、素材供給の層で前に出ている。POSCO Future Mは5月28日、LFP正極材の専用工場建設を開始し、既存のハイニッケル正極ラインの一部も今年下期量産に向けてLFPへ転換していると発表した。同社は再エネ拡大とAIデータセンターによる電力需要増を背景に、ESSとエントリーEVの双方でLFP需要が増えていると明言している。ここが株式市場の読みどころだ。電池テーマは、もはや自動車だけの話ではない。
私の慎重な見方では、これはEV全面高の再来ではなく、利益率の規律と設備選別の取引に近い。安価なセル、正極材、生産能力を現実的に供給できる企業は恩恵を受けやすい。一方で、LFPや蓄電という言葉だけで評価が先走り、稼働率や契約の質が見えないまま買われるリスクには注意が必要だ。
リスク注意: 本記事は情報提供のみを目的とした市場コメントであり、個別の投資助言ではありません。電池、EV、蓄電関連銘柄は値動きが大きく、政策、価格、技術、実行面の変化で見通しが急変する可能性があります。
Sources: Reuters on GM-LG retooling Tennessee for storage batteries | Reuters on Tesla-LG Energy Solution’s Michigan LFP deal | Toyota Battery Manufacturing North Carolina | Volkswagen ID. Polo world premiere | POSCO Future M LFP cathode plant announcement
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